教員をしていると、子どもたちの体力テストをすることがあります。新聞やニュースで、「子どもの体力低下が・・・」と言われる根拠となるのが体力テスト(正確には新体力テスト)の数値です。
でも、現場の先生はみんなわかると思うんですけど、この測定が結構大変です。50m走、反復横跳び、立ち幅跳び、上体起こし、20mシャトルラン、握力、長座体前屈、ソフトボール投げの8種目を児童全員に実施しなくてはいけません。
よくやるのは、学年合同体育にして、3クラスであれば、3人の先生で一気に終わらせるパターン。50m走だったらスタートの合図1人、ストップウォッチ1人、記録1人、みたいな感じです。握力なんかは、握力計の数にもよりますが、教室で自習させながらやったり、体育館で他の種目をやらせている間の待ち時間に子どもにやらせたり、色々なやり方があります。みい太の学校は、教科担当制なので、高学年の体育は全て1人でやるんですよね。体力テストも同じ。200人近い児童の測定を全て1人でやるのは、時間がかかるし、本当に疲れました。
ボール投げの測定ラインを校庭に引くのはかなり大変です。メジャーを引っ張ってペグのようなものに巻き付けてピーンと張りながらコンパスの要領で地面をひっかいて跡をつけていくんですが、50m地点まで来ると、当然円周が長いので、超肉体労働です。文科省のお偉いさんはやったことあるのかな。
体力テストの問題点は、全ての先生が測定に慣れているとは限らない、ということです。新任の先生もいるだろうし、「私、体育苦手なのよね~」というベテランの先生もいます。測定方法も、みい太は体育の担当で毎年のようにやるから大体わかりますが、初めての先生には、わかりづらいと思います。握力は右と左2回測定した内のよい方の小数点以下を切り捨てた数値の平均を出し、その小数点以下を四捨五入して記録しますが、みい太も最初はなかなか覚えられませんでした。
何が言いたいかというと、
結構間違って測定して、提出されちゃっているんじゃないか。
ということです。みい太はずっと疑問に思っています。全国学力調査や市町村の学力テストは先生方も校長先生もピリピリしながらやるのに、体力テストははっきり言ってフィルター機能がほとんどありません。反復横跳びは児童同士でペアで回数を数えたりしますが、数え方が結構難しく、能力の低い児童は正確に数えられないことが多いです。教師が数えればいいじゃないか、と言われるかもしれませんが、教員が全ての児童を全種目測定していくのは、時間的に不可能です。
みい太はやったことはありませんが、提出時に数値を改ざんしようと思えばできると思います。だって誰も、提出された数値が本当に正しいものかなんて確かめませんから。今まで勤めてきた学校がゆるいだけかもしれませんが、全国の学校全てが正確に測定し、偽りなく記録し、提出しているかというと、はなはだ疑問に感じます。そんな信ぴょう性に疑問のある数値を根拠に
「子どもの体力~年連続低下」
とか
「子どもの体力やや回復」
とか、メディアが報じていることが滑稽に思えます。
現場で見ていて、子どもの体力が低下しているのは、疑いようのない事実です。それは、大人の責任もあります。危ないからと言って、色々な制限を加えてしまうので、子どもが様々な動きを体験することができません。この間、自分の子どもがソファからジャンプをして着地をピタッと止めたので、自分は「すごい!」とほめたのですが、妻に「危ないからやめなさい!」と叱られていました(笑)
今は、サッカーはできるけど、逆上がりはできないというように、特定の種目しかできないという子も珍しくありません。そんな明らかに低下している子どもの体力を、あれだけの労力をかけて、体力テストでさらに証明する必要があるのか、と思います。体力テストの数値のピークは昭和60年頃と言われていますが、当時は、教師の強い指導が当たり前に行われていたので、子どもたちは必死で取り組んでいたのだと思います。野球人口も多く、ボール投げの数値も高く出ていたのでしょう。今は、子どもに何かあっては大変なので、シャトルランなどでは、「無理しないできつかったら、やめていいよ」と言います。限界まで頑張る種目だと思うんだけど・・・。
体力テストに労力をかけるくらいなら、その分、運動の楽しさを味わわせることに注力した方がよいように感じます。体力テストで「あなたは、D判定、E判定」と言われるよりは、運動に対して前向きな子どもが育つんじゃないでしょうか。
体力テストの無意味さが一般に知られ、廃止される頃、子どもの体力が救いようのない状態になっていないか、とても心配です。