自分が20代の頃、担任をしていた子が他学年の子と下校途中に喧嘩になり、流血するような怪我をさせてしまったため、保護者を巻き込んだ結構な問題になりました。両保護者を学校に呼んで、話し合いの場を設けた記憶があります。管理職が中心になって対応し、まだ若手だったみい太は、その場にいるだけでした。

担任をしていた子のお父さんがそのトラブルについて管理職と話がしたい、と学校に来たことがありました。いつも面談などはお母さんが来ていたので、お父さんが来るのは初めてでした。年齢は40代後半くらい、白髪交じりの物腰の柔らかい方でした。確か体を壊して仕事をお休みしていたように記憶しています。

管理職が来るまで、お父さんと二人で話していたのですが、お父さんが、

自分が十分に子どもを見てやれなくて、こんなことになってしまって…

と涙ぐんでいたのを鮮明に覚えています。

その時みい太は、

こんな人生の大先輩のような人が、自分のような若造の前で泣くんだ!

と驚き、本当に心を痛めているのだな、と感じました。

15年くらい経ち、みい太もその頃のお父さんと同じくらいの年格好になりました。髪の毛にも白いものが混じるようになりました。

現在育休中ですが、正直、家庭内での子どもたちへの教育、ということが全然できていません。

他人の子どもは18年指導してきましたが、自分の子どもとなると、難しい。

担任をしていた時と同じような感じで叱ると、へそを曲げることもあります。自分の子どもならではの反応ですよね。「学校の先生」という権威がなくなると、普段は家でごろごろしているさえないおじさんだから当たり前でしょうけど…。

みい太には4人の子がいますが、正直丁寧に見られているとは言えません。おそらく学校の先生側からすると、家庭の手が入っていない子、という感じだと思います。忘れ物は多いし、指の爪も伸びていることがあります。

今まで、自分は、仕事だけすればいい、そして、帰ったら、お風呂に入れて、休日遊んでやればいい、という感じでした。

「それだけすればいいんでしょ」と思っていたわけではありません。

でも、仕事で精一杯で、自分の子どもたちのことをあまり深く考えていませんでした。親ではありましたが、子育てをしていたか、というと、子育てしているふりをしていただけだと思います。

仕事もしっかりとして、自分の子どももしっかり育てる、ということがどれほど難しいことか。今まで、妻に細かいことはほとんど任せて、育休中の今でさえ、子どもの洗濯物をたたんでもらったり、持ち物の名前書きをしてもらったりしています。まあ、頼んだわけではなくて、見かねた妻がやってくれちゃうんですけど。

今になって、その時涙ぐんだお父さんの気持ちがわかる気がします。そのお父さんも今まで一生懸命働いてきたけど、体を壊してしまった。そこにきて、子どものトラブルが起きてしまった。

自分が家庭のことを何も見ていなかったからだ、という自責の念があって、涙したのだと思います。

みい太も昨年体調を崩したので、その気持ちが痛いほどわかります。その時は、仕事をこなすだけで体が限界で、家に帰ったら寝ていました。掃除、洗濯、炊事、保育園と小学校の諸々の準備を妻が一人でやっていたかと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいです、自分にはとてもできません。

それに気づけただけでも育休の価値はあるかな。

その時のお父さんも、今は60歳くらいになっているはずです。お会いしたのはその時一度だけでしたが、今は穏やかに暮らしているといいな、と思います。

みい太も15年後、今の自分を穏やかに振り返ることができればいいな、と思います。

後悔しないように歳を重ねるって難しいですけどね。